暴落時の下落をどう考えておけばいいのか?について、金融の素人が本・ネットの情報とほぼ忘れかけている過去の数学の知識を思い出しながら分析をしてみたいと思います。

まずは、一番の土台になる、相場の変動をどうモデル化するか、のためのデータ検証からです。今回は、S&P 500の過去データを使って検証してみます。

正規分布

伝統的な金融工学の多くの理論では、株価の変動率は正規分布に従う、という前提から成り立っています。オプション価格算出のためのモデルである、ブラック・ショールズ方程式においても、価格の変動が正規分布に従うと仮定する事で計算が成立しています。

正規分布とは、このような形の分布のことです。自然現象などを説明する時にもよく使われていて、非常に広く使われている分布です。

正規分布のサンプル

上記のサンプルで、標準偏差(σ)が、この分布の散らばり具合を示す値で変動の幅を示すものとなります。ポートフォリオの場合、これをリスクとも言います。

正規分布の場合は、平均から±1σの幅に約68.3%、±2σの幅には約95.4%、の確率で収まります。

例えば、相場の変動が正規分布に従い、年間の平均リターンが5%でリスク15%の場合。相場の変動率は、2σである-25%〜+35%に約95.4%の確率で収まる、という事になります。これは、-25%を超えるような大暴落は20年に一度くらいの頻度で発生する、と言い換えられます。(±2σに収まらないのは約5%のため)

±3σに至っては、約99.7%がその範囲内に収まるので、数百年に一度クラスの出来事である、という事になります。

S&P500の過去データ

今回の検証のサンプルとして、1950年から現在までのS&P500の日次の価格変動を利用します。グラフとしてはこんな感じです。

S&P500の推移

1950年にS&P 500に投資して、2017年までじっと待っていられたら140倍近くになっています。大きく下がっている局面もありますが、米国株式投資においては、長期投資をすれば必ず良い結果になる、という過去の図式になっています。

インデックス投資による長期投資がオススメされるのも、この米国株式の成功体験に依るところが大きいと思います。

日本株式の場合、20年以上前のバブル期の高値で掴んだ人は非常に長い期間報われなかったので、長期であれば必ず勝てるわけではなく、アセットアロケーションがやはり重要です。

S&P 500の日次の変動率の分布

S&P500の1950年以来の日次の変動率を検証します。変動率の実際の分布と、平均・標準偏差から算出できる正規分布を重ねるとこのようになります。平均μが0.034%、標準偏差σが0.96%です。

過去の変動率の分布と正規分布の比較

似たような形ではあるものの、実際の過去データの方が中央付近が突きあがっており、正規分布とは離れているように見えます。

次に、このグラフの下の部分だけを拡大したのがこちらです。

過去の変動率の分布の拡大図

拡大して分かることは、正規分布だとほぼ起こらないとされているような変動率での相場変動が、結構発生している、という事になります。実は、これが大きなポイントです。

正規分布であれば、±3σの範囲内に収まる確率は約99.7%です。今回は日次のデータなので、これは、年1回起きるか起きないかのレベルの事なのですが、結構頻繁に起きています。

それどころか、正規分布ではほぼ発生しないような±5σより大きな変動が年1回くらいの頻度で起きている事になっています。−5σは-4.8%くらいなので、確かにたまに目にしそうなイメージです。

つまり、正規分布を前提にした場合に滅多に起きないとされるレベルの変動が、現実では理論値よりも高い頻度で起きている、という事です。よく見る計算上のリスクよりも、現実のリスクは高いかもしれない、となってしまいます。

データの分布
実際のデータ 正規分布
±1σ 78.7% 68.3%
±2σ 95.3% 95.4%
±3σ 98.6% 99.7%
±4σ 99.4% 99.994%
±5σ 99.7% 99.9999426%

まとめ

実際のS&P 500の変動は、正規分布に形は近いものの、暴落・暴騰といった特殊なケースが、想定される正規分布よりも明らかに多く発生していました。

従って、リスク10%のポートフォリオだからマイナス40%なんてまず起きない、というような正規分布を前提したリスクの考え方は、何かあった時に想定を大きく超えてしまう可能性がありそうです。

まずは何はともあれ「リスク分散」ですね。その上で、リスク資産の割合は平常時は高くしすぎず、何かがあった時に身動きとれるようにしておく、というセオリー通りが良さそうです。

今回確認した、相場の変動は正規分布なのか?はもちろん全く新しいトピックではなく、「べき分布」という分布に従うという理論があるようです。次回は、その辺りをもう一歩進めてみたいと思います。

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